Japanese
English
臨床経験
左上腕骨に原発した悪性線維性組織球腫の1例
A case of malignant fibrous histiocytoma of the left humerus
井内 康輝
1
,
徳岡 昭治
1
,
堀 司郎
2
Kouki INAI
1
1広島大学医学部第2病理学教室
2広島大学医学部整形外科学教室
12nd Department of Pathology, Hiroshima University School of Medicine
pp.1116-1120
発行日 1979年11月25日
Published Date 1979/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906021
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要約
1)65歳,女性の左上腕骨近位骨幹端に原発した骨の悪性線維性組織球腫の1例について,その概略を報告した.左上腕骨切除に次いで左肩関節離断により腫瘍を摘除したが,腫瘍はその都度再発し,更に左腋窩リンパ節および肺への転移を来たした.
2)組織学的に腫瘍は,骨内の原発巣では主として線維芽細胞様の紡錘形細胞群からなつていたが,骨外への浸潤巣および転移巣では腫瘍細胞は組織球性の性格をより強く示し,多数の多核巨細胞の出現をも伴つていた.
3)欧米における報告例約100例の記載によると,一般に骨原発の悪性線維性組織球腫は,40歳以上の中,高年齢層に多くみられ,長管骨骨幹端に好発してレ線上骨透亮像を示す.既往に同部のmedullary bone infarct,Paget病,放射線照射などの骨破壊性病変を有する症例が少なくない.
4)上記2)のごとく,原発巣と,骨外の浸潤転移巣とにおける腫瘍の組織像が異なり,原発巣では主として線維芽細胞様の腫瘍細胞が主体を占めるが,骨外の浸潤転移巣では,組織球性の性格をより強く示唆する細胞群が出現する例は,Spanierらの11例中の2例にもまた認められている.この点は骨原発の本腫瘍における興味ある所見であるが,本腫瘍の診断をより困難とする主要因の一つでもあろう.
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