視座
学問の細分化と学際研究の場
山室 隆夫
1
1京都大学整形外科
pp.737
発行日 1979年8月25日
Published Date 1979/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905962
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大学紛争は医学部が発火点となつておこり,当時のスローガンの一つとして医局講座制の粉砕ということがあげられていた.その内容や当時の運動のあり方の是非はとも角として,多くの若い研究者達は大学間にある根強い学閥や学部間あるいは講座間にある不要に厚い壁が何とかならぬものであろうかと素朴な気持で考えたことは事実であると思う.科学の一つの方法は事象の細分化であり,そのために学部・学科・教室・講座などのいわば縦割り的な体系が果してきた歴史的役割は非常に大きい.またあれだけ激しく燃えさかつた大学紛争の火ですら講座制の撤廃ということに関しては全く何の変革をももたらしえなかつたということは,ある意味では講座の機能が今日においても科学の細分化の先兵として十分に生きているということを物語つていると思われる.かつて大学では学問の進歩と社会の要請に応じた形で学科・講座あるいは附属研究所の増設がなされてきたが,最近では一旦できた施設が廃止されたことはほとんどなく既得権と独立性を主張しながら学問の細分化への方向をどんどんと推し進めてきている.このような方法による研究領域の充実化は過去においてはきわめて必要であつたし,今も学部・講座は十分に機能を果してはいる.
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