シンポジウム 変形性股関節症の手術療法
変形性股関節症の手術療法—適応と術式
上野 良三
1
Ryozo UENO
1
1奈良県立医科大学整形外科学教室
pp.551-556
発行日 1974年7月25日
Published Date 1974/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905015
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いとぐち
近年,高年齢層の増加や,労働年齢の上昇により関節症,とりわけ股関節症の治療が整形外科臨床のうえで重要性を増してきている.股関節症の治療の目的は,持続的に良好な機能を有する関節を再建することであり,長期間にわたつて優れた治療成績が保証された治療法を選択すべきであることはいうまでもない.10歳前後ですでに関節症性変化を有する場合や,70歳以上で治療を必要とする症例もあり,その半数近くが両側性であることから治療方針,手術の術式ならびに後療法が各症例によつて異なり,治療を開始するに当つて周到な計画と,予後に関して十分患者の諒解をえておくことが必要である.
股関節に著明なレ線変化を有する場合には腰椎,膝関節などの検索が不十分になることが多いが,膝関節症—これは2次的変化である場合もあるが—を合併する場合もあり,膝関節との関連にも留意しなければならない,術前の骨盤傾斜や脚長差も考慮すべきで,罹患股関節の局所症状のみにとらわれるべきではない.股関節症は,疼痛以外に可動性制限が主訴である場合や,関節の不安定性が症状の中心をなしていることがあり,症状からみても術式を選択する必要がある.
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