視座
姿勢と整形外科
山田 憲吾
1
1徳島大学医学部整形外科学教室
pp.201-202
発行日 1974年3月25日
Published Date 1974/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904963
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姿勢と運動とはHaglundの定義にまつまでもなく整形外科の基本的重要課題である.前者は,骨格筋の生理的現象として,γ系神経支配によつて反射的に営まれる筋活動の静的表現であり,後者はα系神経支配によつて随意的に営まれる動的表現である.あらゆる運動は姿勢(肢位)の背景の下に円滑に演出されるものであつて,両者は常に表裏一体,互に相補の関係にある.
さて,随意運動指令の主座は脳皮質の一次的運動領野にあるとされるが,配下の末梢体部に対応し特定の中枢性支配区域がある.その区域の解剖的広さは体部の広さと必ずしも比例しない.一般に巧緻運動を必要とする体部に対してはその区域領野が広く,然らざるものは狭い.Penfieldの模式図でも明示されるように,一次的運動領野は顔面器官や手に対しては広く,下肢には狭く,軀幹に至つては無視し得るほどに狭い.このような錐体路系(α系)支配の乏しい体部に対しては,皮質下の基底核や脳幹,脊髄の錐体外路系(γ系)自動機構がその機能を補填している.即ち,皮質領野の狭い下肢では,その機能が歩行のような半自動機構によつて補われ,それを下肢の主要な仕事としている.また,皮質領野の殆んどない軀幹は,脳幹脊髄系のγ回路を介する反射機構(平衡機能)により専らその姿勢を保持し,筋トーヌスによつてそれを自動的に維持することが軀幹の本態的な役目とされている.そして,このような中枢神経機構,即ち,その内部のからくりによつて末梢体部の機能分担が合理的に配備され,個体としての全般的な機能統合がなされる.
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