視座
残された命と整形外科
山田 憲吾
1
1徳島大学整形外科
pp.99
発行日 1976年2月25日
Published Date 1976/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905307
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あれからもいろいろなことがあつたが,大局的にみて「平和らしい」戦後30年ではある.当歳生れの若手医師も孔子流にいえば「三十而立」とか,それぞれに責任ある立場が求められるようになつたし,Brezhnevがソビエトの戦勝30年記念式挨拶で強調したように「父祖の不滅の偉業を名誉あるバトンとして受け継ぐべき若者」が地球の各地で成長しつつある.ともかく,この30年間における医学の進歩は目覚しく,我々が先輩から引き継いた整形外科分野でも画期的とすらいえるものが多々ある.ポリオの消滅,カリエスや骨髄炎の激減など,これに加えて25年にも及ぶ平均寿命の延長があるが,これは正に世紀的達成といつてもよかろう.
ところで,これからの医師がその実践と理念を通して今日の医学に何を加えようとするか,ここに将来の課題がかけられている.いうまでもなく,人の生命は,その再現が不能であり,それ自身地球にも匹敵する重さを持つというが,宇宙の永きに比すればほんの束の間に過ぎない.その故にこそ貴く,畏敬の念が持たれることも当然であろう.ともかく,有限な人の命は長ければ長いだけに,短かければ短いだけに貴重である.
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