論述
乳幼児先天股脱の治療
坂口 亮
1
Ryô SAKAGUCHI
1
1東京大学医学部整形外科
pp.697-707
発行日 1967年7月25日
Published Date 1967/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904260
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はじめに
先天股脱治療の歴史の上で,A. Lorenzはとにかく一つの山をなしている.彼は,まず脱臼骨頭を整復して,これを一定期間固定しておけば,関節機構が修復され治癒するとの考えを打建て,具体的方法として,槓杆作用を応用して,寛骨臼の後壁をこえて瞬間的に骨頭を整復し,これを保つのに90°屈曲,90°外転のいわゆるLorenz肢位を用いた.非観血的治療体系ができ上り,Hippocrates以来不治とされたこの疾患が治るようになつたと喧伝されもした4).ところが,それら症例の後年の成績が当初の期待ほどのものではないことが知られるに至り,批判や反省が起こつてきた.方法上「一気に整復すること」と,「非生理的肢位で長く固定すること」が不成績の最大の原因とみなされ,そこに種々の工夫が集中した.たくさんの類似の工夫が考え出されたが,そのうちに,運動をさせながら治していこうという,Lorenzの原法からは大きく飛躍した機能的治療法も行なわれ出した.
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