視座
歴史
伊藤 鉄夫
1
1京都大学医学部整形外科学教室
pp.827
発行日 1968年10月25日
Published Date 1968/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903979
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先般,天児先生の「医学史の横路」という論文を拝見して,先生の深い御造詣に強い感銘を受けた.永い年月の批判にたえて後の世に伝えられるような治療法というものには,みなそれぞれに発展の歴史がある.それを知ることによつてその治療をよりよく理解することができるし,またこれに深い愛情を覚えるようになるものである.
大腿骨骨頭の人工骨頭による置換については,1943年にMooreの論文が発表されている(J. Bone and Joint Surg.,25:688,July 1943).これはmetal hip jointの1例報告であるが,大腿骨人工骨頭の最初の論文である.この頃に用いられた骨頭は,今のMoore型のものに比較すると,随分不細工なものであるが,Vitallium製であつた.1952年には,既に現在用いられているようなMoore型のVitallium prosthesisを33例に使用し,その成績がすぐれていることを発表した(Southern Medical Journal,45:1015,Nov. 1952).この論文にはDelbetが1919年にreinforced rubberで作つた人工骨頭を使用したということが記載されている.しかしMooreのこの論文はまだそれほど大きな世の反響をよばなかつた.それは発表された雑誌が広く読まれているものでなく,症例数も多くなかつたということによると思われる.
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