臨床経験
殿筋麻痺に対する外転再建術の経験
伊藤 秀芳
1
,
井上 新也
1
,
中村 純次
1
,
片山 国昭
1
,
長谷川 芳男
2
,
高田 若雄
2
Hideyoshi ITO
1
1肢体不自由児施設栃木県立若草学園
2東京慈恵会医科大学整形外科学教室
pp.531-536
発行日 1968年6月25日
Published Date 1968/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903936
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いとぐち
脊髄性小児麻痺の下肢筋麻痺には,いろいろな種類と程度があることは,申すまでもないが,中でも殿筋群の麻痺は,その障害の大きいこと,機能再建のむずかしさの点で,われわれを苦しめるものの1つである.したがつて,殿筋麻痺再建については,早くからいろいろな手術法が考案されてきた.Fritz Lange(1913),Leo Myer(1916),Kreuscher(1927),Ober(1927),河邨(1958)らは同側の仙棘筋を送力源とし,玉置(1962)は対側の仙棘筋を利用した.また,Masterd(1952),寺沢(1964)らはIliopsoasに送力源を求め,Ober(1927),Thomas-Thompson-Straub(1950),蒲原(1962)らは同側の外腹斜筋を選んでいる.以上のような方法がかなり長い歴史をもつて行なわれているにもかかわらず,いまだ送力筋と受力筋の間の機能関係は,全く明瞭でないといつても過言ではない.したがつて,最近では送力筋が機能的に受力筋の代償を完全に行ないうるか否かについて,筋電図学的に検討され,興味ある知見が発表されるにいたつている.しかし,殿筋麻痺再建においては,送力筋を選択するばあい,殿筋と活動位相を同じくするものと,しからざるもの,あるいはその走行の相違によつて,どのように影響されるかについては,いまだあきらかな知見があるとはいえない.
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