診療の経験から
年長児および成人の先天股脱の治療方針
青池 勇雄
1
Isao AOIKE
1
1東京医科歯科大学整形外科学教室
pp.236-242
発行日 1968年3月25日
Published Date 1968/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903893
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緒言
先天股脱は,今ではほとんど生まれると間もなく,大抵は数ヵ月のうちに治療が始められるので,治療成績は昔に較べると非常によい.生まれて間もない頃では臼蓋形成不全か亜脱臼が多く,たとえ完全脱臼でも,大抵は開排位て容易に整復され,Riemenbügelのような関節運動を多少許す装具で治療されるので,関節軟骨の栄養障害が少なく,骨頭の壊死をきたす危険がない.また早期では関節軟骨の順応性が高いので臼蓋も骨頭も正常な関節に発育しうる.これに反して,年齢が進むに従つて,脱臼も臼蓋形成不全もその程度が高度となり,整復に抵抗し,Lorenzの肢位などで整復位を一定期間固定する必要がある.そして年長児になると,筋肉,関節,靱帯の短縮は非観血では除かれ難いほどに高度となり,髀臼,骨頭の発育障害,変形は避けられなくなり,整復不可能か,整復されたとしても将来の二次的変形性股関節症の発生を覚悟しなければならない.したがつて先天股脱の治療は乳児期の前半に始めなければならないが,現在でもまだ年長児や成人で治療をするものも少なくない.
それには色々な場合がある.乳幼児期に発見されて治療をうけなかつたものでは骨頭が腸骨の後方に高く脱臼して,新関節を形成したり,腸骨壁に接して動揺しているものであり,破行を主訴とするものと,疼痛を主訴とするものとである.
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