歴史
日本整形外科学会雑誌から—第15から16巻まで
天児 民和
1
1九州大学
pp.721
発行日 1966年10月25日
Published Date 1966/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903817
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第15巻には第15回日本整形外科学会の宿題報告「淋疾性関節炎」(島田信勝,小泉次郎)がある.これは化学療法の行われなかつた当時の淋疾の難治性とそれから起こる合併症としての関節炎を詳細に論じた論文である.これには指導者前田和三郎教授と担当者島田教授の性格が極めて鮮やかに現われている.即ち臨床的観察が緻密で親切で優れた臨床的な業績である.もう一つは特別講演「臨時東京第三陸軍病院において経験せる戦傷と整形外科」(大江捷次郎,水町四郎,伊藤原)がある.学会も漸くこの当時から戦時色濃厚となり,有能な整形外科医が陸海軍の病院に応召してそこで存分にその能力を発揮したのもこの時代である.そしてこの論文により戦傷患者の多くが整形外科領域に属するものであることを明らかにし,特に補装具,義肢に関しては注目すべき業績をあけている.戦時中にも拘らず第15巻には多くの優れた業績がある.「陳旧性肘関節脱臼の研究」(神中正一)は肘関節脱臼の手術々式,殊に三頭筋の腱延長の必要なことを説いて後療法にまで及んでいるが現在もなお我々はこの手術術式を用いている.我が国の椎間板ヘルニアの最初の手術例は東陽一,市村平八郎によつて昭和7年雑誌「グレンツゲビート」6年,12号,1に発表せられている.不幸にしてこの業績は日本整形外科学会雑誌にはのつてないが,これに刺戟せられて前号に続いて脊椎椎間軟骨後方脱出に続発せる線維軟骨腫の1例」(甲斐太郎,和田進)の発表もある.
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