歴史
日本整形外科学会雑誌から—第13巻から第14巻まで
天児 民和
1
1九州大学
pp.607
発行日 1966年9月25日
Published Date 1966/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903802
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第13巻の出た昭和13年はすでに支那事変が勃発していたがこの雑誌には全く戦時色は見られない.しかし昭和13年京都で行なわれた日本医学会総会には多くの陸海軍軍人の特別講演が行なわれたことは未だ記憶に残つているところである.しかし第13巻ではスポーツによる骨変化と脊髄外科に関する論文が多い.特に注目をひくものは脊髄後根切断による人体皮膚知覚像の臨床的吟味(野崎寛三)である.これは日本人で臨床的にはじめて後根の皮膚知覚支配を明らかにしたもので脊髄外科における高位決定上有益な業績である.また足圧痕の研究(横倉誠次郎)がある.これは横倉氏の多年に亘る扁平足の研究の一環である.また剖検上よりみたる頸椎頸髄損傷の知見補遺(西新助)は7例の頸椎頸髄損傷死亡例について詳しく検討し,所謂頸椎損傷において椎間板損傷の頻度が非常に高いことと意義の重大なことをその当時において指摘した.特にラミネクトミーを行なつた場合脊髄後面に殆んど変化がない場合でも椎間板損傷による脊髄前面の変化の多いことを指摘した.これらの業績は今日においても脊髄損傷の初期治療に関して種々な意見が出ているがなお参考にすべき業績である.なお昭和13年日本医学会総会の整形外科分科会においてペルテス氏病の成因に関する諸学説の批判(名倉重雄)が発表せられている.この講演が名倉教授のペルテス病の成因に関する研究の最初の発表であつてその当時から長坂清人氏との間に激しい論争が行なわれていた.
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