装具・器械
自動式義手の進歩
中村 裕
1
1国立別府病院整形外科
pp.97-101
発行日 1966年4月25日
Published Date 1966/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903729
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人間の上肢ことに手は,人体各部の内で最も巧妙なものであり,われわれの日常生活において頻繁に多種類の運動をする大脳の出先である.下肢が体重を支持し,移動を主目的とするのに比較して手指の運動は,機能的のみならず知覚的にもデリケートであり,失われた手の機能をなん等かの方法で代償することは,下肢のそれと異なり根本的に難しい多くの問題を含んでいる.第2次大戦以来,義足の発達には,めざましいものがあるが義手の分野では著明なものは少ない,現在一般的に使用されている義手は,身体の一部分の力をコントロールケーブルにより一方的に牽引して,フックまたは人工指を開き,ゴム,スプリング等の弾性を利用して閉ぢるようになつておる.しかしこの機械的伝導方式では複雑絶妙な手の運動を代償することは,困難である.しかも義手は,使用目的により装飾義手,作業義手,装飾作業義手にわけられているが,一本の義手で機能解剖,生理学的にまた心理的に満足のゆくものは未だないのが実情である.
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