視座
頻発する医療事故に思う
落合 直之
1
1筑波大学臨床医学系
pp.701-702
発行日 2001年6月25日
Published Date 2001/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903295
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昨年は,堰を切ったかのごとく毎日のように医療事故が報じられた観がある.急にこの手の事故が増えたわけではないはずで,これまでは病院内部で処理されていたものが,すべて白日に晒すべきという情報公開の理念の導入に伴う社会通念の変革期を反映した結果といえよう.いわゆる世間の考え方の変化,別の言い方をすれば患者と医師の人間関係が日本的なウェットな関係から,欧米的なドライな関係にシフトしてきていることの表れともとらえられる.
1月20日付けの読売新聞には,“医療事故調”設置へという見出しで以下のようなことが書いてあった.多発する医療事故を減らすために,厚生労働省は,新年度から医療安全対策検討会を設置する.そこでは,ヒューマンエラー部会で人がかかわった事故を扱い,医薬品・医療用具対策部会で医療用具の欠陥などが原因の事故を考える.さらに医療事故を複合的に分析し防止対策を練るために,委員には,医師など医療従事者のほか,トータルな事故分析が定着している航空業界からも事故調査の専門家を招く.将来的には航空機事故の際に設置される事故調査委員会のような組織に発展させたい.同省は,今後ニアミス体験のデータを全国的に収集し,共通事故レポート用紙から事故原因を統計的に処理し再発防止策の提言をしていきたい,といった内容である.
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