シンポジウム 長期成績からみたBipolar型人工股関節の適応の再検討
緒言
山室 隆夫
1
1京都大学
pp.14
発行日 1995年1月25日
Published Date 1995/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901535
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最近カップ関節形成術の術後20年以上の長期成績を調査してみて,その成績がかなり良いことに驚いた.しかし,カップ関節形成術の欠点の1つは関節の可動性が人工股関節置換術のそれに比して明らかに劣ることにある.それでは,セメント固定をする必要のないカップと可動性のよいユニバーサル・ジョイントとを組み合せたBipolar人工股関節はカップ関節形成術と人工股関節置換術の長所を併せ持った素晴らしい人工関節であるかも知れない.日本へBipolar人工股関節がベートマンによって紹介された頃,われわれはこのような期待を持ってこの人工関節を受け入れたのであった.それから15年が経過した.その間にBipolar人工股関節の適応や成績について種々の議論があった.大腿骨頚部骨折や臼蓋の関節軟骨の温存されている大腿骨頭壊死に対してはBipolar人工股関節は良い適応であるということは国の内外を問わず広く受け入れられる意見となり,先進国においてはムーア人工骨頭よりもBipolar人工股関節が最近では多く用いられるようになってきた.
ところが,変形性股関節症に対して臼蓋をリーミングして関節軟骨を全く除去した上で,Bipolar人工股関節を挿入する方法については研究者によってかなり意見が異なっており,結論は長期成績を観察することができるようになるまで持ち越されてきたと言ってよい.臼蓋リーミングを伴ったBipolar人工股関節の最大の問題点はアウターヘッドのマイグレーションである.
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