特集 脊椎転移の治療 最前線
緒言
村上 英樹
1
Hideki MURAKAMI
1
1名古屋市立大学整形外科学講座
pp.1216
発行日 2021年10月25日
Published Date 2021/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202153
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先日,妻の買い物に付き合い,ショッピングモールにある書店に立ち寄った.医療コーナーで足を止めると,そこには「名医に聞く○○の治療」「○○の名医##人」など名医に関する書籍があまりにも多いことに驚いた.そこにはお会いしたことのある整形外科疾患の名医を何人も見つけることができたが,残念ながら,脊椎転移の名医は見当たらなかった.そして“脊椎転移”を疾患の見出しに挙げている書籍や雑誌はたったの1冊もなかった.“骨転移”さえも…….現在,国内では骨転移患者が新規に年間15万人も発生していると推定されているにもかかわらず,である.骨転移の約75%は脊椎転移,15万人と言えば大腿骨頚部骨折の年間発生数と同じである.
私が思うに,例えば人工膝関節置換術を日本の名医が施行しようと,うちの医局員(名医には挙げられていなかった!)が手術しようと,手術成績は何ら変わらないであろう.腰部脊柱管狭窄症も然りである.書店で見つけた名医が手術しようがうちの医局員が手術しようが,その手術成績に大差はない.手術成績を左右するのはむしろ,患者側の因子がほとんどである.医療側の因子が手術成績を大きく変えることはまずないのが実状である.ところが,脊椎転移ほど整形外科において医療側の因子が治療成績を左右する疾患はほかにないと言っても過言ではない.
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