シンポジウム 関節スポーツ外傷の診断と治療―最近の進歩
緒言
史野 根生
1
,
中嶋 寛之
2
1大阪労災病院スポーツ整形外科
2東京大学教養学部体育科(スポーツ医学)
pp.27
発行日 1994年1月25日
Published Date 1994/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901276
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- 文献概要
従来“捻挫”と総称され,軽視されることが多かった骨折を伴わない四肢関節の外傷は,スポーツにより生じることが多い.この中にはほとんど自然に治癒する軽症のものから,スポーツ活動どころか日常生活の障害を来たす重症のものまでが含まれ,かつ損傷組織も靱帯のみならず軟骨(半月を含む)や軟骨下骨に至ることも少なくない.近年,生体力学,損傷靱帯治癒の生物学,MRIをはじめとする画像診断法,関節鏡学の進歩により,スポーツによる関節外傷の病態学や治療法は飛躍的な進歩を遂げつつある.本シンポジウムでは,スポーツにより傷害を来たし易い肩,肘,膝,足関節に各々造詣の深い先生方に,各々の関節に特異的な病態に焦点を当て,最新の知見を総括して頂き,将来の展望を述べて頂くことを狙いとした.
1)肩関節:肩関節の前方(亜)脱臼では,主としてCT関節造影により損傷組織が正確に描出されるようになり,症例によっては関節鏡視下手術により破綻した組織の修復をより正確に修復し得るようになったことが明らかにされた.しかしながら,腱板障害を始めとする,いわゆる“投球肩”では未解決の部分が少なくない.つまり,肩不安定性と腱板障害の相関関係については未だ一定の見解がなく,治療の点でも種々の論議が行われつつある.
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