増大号特集 できる整形外科医になる! 臨床力UP,整形外科診療のコツとエッセンス
column
答えは現場にある—膝複合靱帯損傷は初期治療から
石橋 恭之
1
Yasuyuki ISHIBASHI
1
1弘前大学大学院医学研究科整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, Graduate School of Medicine, Hirosaki University
pp.666
発行日 2023年5月25日
Published Date 2023/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202674
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重度の膝関節外傷の1つに膝関節脱臼・複合靱帯損傷がある.その治療には,まず保存的に関節外靱帯の治癒を待ってから待機的に靱帯再建術を行う方法と,早期に関節外靱帯の一次修復をしてから二期的に再建術を追加する,2つの方法がある.私が膝関節外科を始めた当初,前者の方法で何例かの治療を行った.しかしその成績はいずれも芳しくなかった.
膝複合靱帯損傷の合併症の1つに膝窩動脈損傷があるのはご存じの通りである.診断の見逃しはもちろんご法度であるが,診断をつけても早期に血行再建が行われなければ下肢切断に至ることもある.膝関節後方アプローチで膝窩動脈を展開するが,本外傷に伴う動脈損傷は完全断裂よりは内膜損傷が多い.その場合,静脈移植を用いた血行再建となるため,緊急手術は夜間に及ぶことも稀ではない.血行再建は専門医に任せ,後日靱帯損傷だけ治療するというのもありである.しかし,血行再建から治療に参加し膝窩部から膝関節を観察してみると,関節包や靱帯は広範に断裂し転位しており,これらは保存的には決して治癒できないことが理解できた.
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