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あとがき
酒井 昭典
pp.456
発行日 2022年4月25日
Published Date 2022/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202318
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古代エジプト時代あるいはそれ以前の太古から今日に至るまで,人類は骨軟部組織感染症と闘い続けてきました.長らくは致死の病として,四肢の切断を余儀なくされてきましたが,抗菌薬の登場によって死を回避することが可能となりました.新規抗菌薬の開発とともに,創洗浄,ブラッシング,デブリドマン,創外固定などの手術手技の工夫により治療成績が向上してきました.さらに,近年,持続局所抗菌薬灌流(CLAP)が難治性の骨軟部組織感染症に対する治療においてパラダイムシフトを起こしました.善家雄吉先生にご企画いただいた本号の特集「骨軟部組織感染症Update」では,感染症と治療法の歴史的変遷・温故知新,抗菌薬の使い方,四肢および脊椎における具体的な治療戦略が記載されています.過去の辛酸をなめた経験とともに最新の医療技術に関する情報がたくさん盛り込まれています.本号の特集を通して,感染による運動機能損失を最小限に抑えつつ,感染を制御できる時代が到来することを願っています.
Lectureでは,鑑定人となる場合に留意すべき事項を宗像 雄先生から教えていただきました.私も裁判所から依頼され医療訴訟の鑑定人になったことがありますが,鑑定事項に対する返答の内容はもとよりその文章の枝葉末節にも相当な神経を使い,労力を費やした苦い経験があります.カルテの記載内容や検査データだけでの判断には限界があることを痛感しました.私が鑑定を担当した訴訟案件はその後,和解に至ったとのことで,裁判所から感謝されたことは幸いでした.鑑定を引き受けるにはそれ相応の強い覚悟が必要であることを再認識いたしました.
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