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あとがき
酒井 昭典
pp.988
発行日 2020年8月25日
Published Date 2020/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201782
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盛夏の候,皆様お元気でお過ごしのことと拝察いたします.COVID-19がなければ,今頃は,オリンピック・パラリンピックで世間は大いに盛り上がっているはずでした.「新しい生活様式」によるマスク着用での日常生活が,夏の暑さによる脱水や気分不良に結び付かないことを願っています.
今月号の特集は,整形外科領域におけるAI(人工知能)の活用です.2016年,膨大な医学論文を学習したAIが,専門家でも診断が難しい60代の女性患者の特殊な白血病をわずか10分で突き止め,抗がん剤の変更を提案し,患者の回復に貢献したというニュースは実に衝撃的でした.ディープラーニングの手法は膨大な量のデータをAIが学習することを可能にし,特に画像解析における判定の精度を飛躍的に向上させました.画像から骨折の判定を行うAIの開発は,救急医療現場で専門外の医師が初期診断を行う際に有用で,見落とし率を低減させます.畳み込みニューラルネットワークに基づくディープラーニングは放射線科医に匹敵する高い鑑別能でMR画像から神経鞘腫と髄膜腫を識別することを可能にします.手術手順を通知するシステムは,術中の器械受け渡しミスをなくし,手術時間を短縮させます.脊柱側弯症に対して,術中の側弯配列ではなく生理的後弯を予測したロッド形状によって脊柱配列を積極的に作り変える時空的観点を取り入れた4D矯正手術法が考案されています.このようにAIの技術は,整形外科の日常臨床において我々が不得手とする領域に応用されつつあります.今月号の特集を通して,整形外科領域におけるAIのカッティングエッジを誌面から感じていただければ幸いです.
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