誌上シンポジウム 椎間板研究の最前線
緒言
西田 康太郎
1
Kotaro NISHIDA
1
1神戸大学大学院整形外科脊椎外科部門
pp.944
発行日 2018年11月25日
Published Date 2018/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201205
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
脊椎における基礎研究の対象として,椎間板は常にその中心的存在となってきた.その理由の1つとして,椎間板の変性が多くの退行性脊椎疾患に直接的あるいは間接的に関与していることがあげられる.その一方で,椎間板研究には様々な障壁が存在し,過去20年,順調であったとは言い難い.
腰椎椎間板は人体最大の無血管組織であるがために,その再生能力には大きな限界がある.ヒトの髄核にはわずか6,000個の細胞しか生存していないとされる.無血管に伴う低酸素・低栄養状態ではこれくらいの細胞数しか維持できないのであろう.また逆に,髄核細胞はこの環境に適応し高度に分化した細胞であるともいえる.このわずかな数の細胞が,細胞外基質の塊のような大きな椎間板の恒常性を維持しているというところに,そもそも無理があるように思えて仕方がない.また,理想的な椎間板変性モデルの作成が難しい.臨床をよく反映した動物モデルに乏しく,また作成にも技術を要するものが多い.さらにいうと,in vitroや小動物ならともかく,上記の環境に伴う必然として椎間板の基質はvery slow turnoverとならざるを得ない.その結果,何らかの治療に伴う生物学的な効果が,形として認識されるようになるためには非常に時間がかかる.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.