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外反母趾の多くは靴の装用により引き起こされる2次的な足趾の変形である.母趾MTP関節は内側に母趾外転筋が,背側に長・短母趾伸筋腱が,底側に長母趾屈筋腱と2つの種子骨につながる短母趾屈筋があり,外側の種子骨には母趾内転筋が停止している.これらの腱を取り巻く支帯は,母趾MTP関節の関節包を包むように連結していて,周囲筋は微妙なバランスの上にMTP関節を安定化させている.母趾が外反方向に継続的に傾けられると,これらの周囲筋からの力は母趾基節骨を介して中足骨頭を内側に押し出し,第1中足骨が内反するため第2中足骨軸となす角が増大する.変形が起き始めると母趾外転筋腱が底側に変位するため,母趾が外反するのを制御する力がなくなり,変形はさらに進行し,中足骨頭は種子骨を置き去りにして内側へ変位していく.前足部の横アーチは失われ,第1中足骨頭から第5中足骨頭までの幅が大きくなり,立位では第1中足骨は回内方向に回旋している.
したがって,外反母趾手術では亜脱臼状態にあるMTP関節を整復し,変形の結果として起こっている関節拘縮を解離し,筋力のアンバランスを母趾の外反力が発揮できるように矯正し,前足部の横アーチを再建して体重が足底に偏りなく分散できるようにすることが求められる.しかし,中足骨骨切り術後に母趾MTP関節が選択できる位置は,周囲を腱によって連結されているため有限である.パラボラと呼ばれる中足骨頭の自然なつながりを再建することが,痛みや胼胝のない足部に矯正するには必須である.近年,足の外科で議論されてきた要件には,第2中足骨の長さに第1中足骨の機能長を合わせること,中足骨の回内変形を矯正し,正面X線写真で中足骨頭の遠位関節面が扁平にみえるようにすること,中足骨頭を種子骨の上方にくる位置まで戻すことなどが挙げられるが,その結果として外反母趾角や足部の縦横のアーチ形成も良好になった.また,足部専用に開発された固定金属も成績向上には大きく貢献している.
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