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MRIや鏡視下手術の普及などにより,膝疾患に対する診断・治療は飛躍的に進歩してきた.中でも半月の変性(断裂)は,MRIで比較的容易に診断できるようになってきたが,症状が多彩で,軟骨損傷などを合併していることも多く,変性断裂と診断しても,どのように治療するか悩むことも少なくない.今回の特集では,この分野での第一人者6名の先生方に,半月変性断裂の治療をどう行うかについて,最近の知見も含め,話題提供をしていただいた.
渡辺淳也先生は,合併する変形性膝関節症(OA)の評価も含め,関節内病変を広く捉えることが可能な撮像法を用いることが必要との立場で,半月変性断裂のMRI評価法および中高年のMRI所見の特徴と症状との関連について,わかりやすく解説していただいた.大森豪先生は,変性断裂に対する治療のゴールは,臨床症状の改善と再発予防と考え,OAとの関連性も考慮して保存治療を第一選択とすべきであるが,一定の効果は期待できるものの十分ではないと述べられている.保存治療で症状が改善しなければ,切除術を選択せざるを得ないが,上松耕太先生は,15年以上経過した内側半月断裂症例の自験例を元に,成績は良好ではあるが,アライメント,切除範囲,スポーツ活動などを考慮して,将来のOAリスクが高い人には,縫合術や再生医療の必要性を述べられている.変性断裂に対する縫合術の適応を拡大して積極的に行っている萩原敬一先生には,手術方法を中心に解説していただいた.若年者には変性断裂は稀だが,中田研先生には,3次元動態MRを用いた診断と縫合術の工夫だけでなく,生体材料などを補填する治療法の可能性についても述べていただいた.中川裕介先生には,東京医科歯科大学で施行されている滑膜由来間葉系幹細胞を用いた治療法について,最近の臨床試験も含めて紹介していただいた.
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