特集 人工関節周囲感染の現状と展望 国際コンセンサスを踏まえて
緒言
田中 康仁
1
Yasuhito TANAKA
1
1奈良県立医科大学整形外科
pp.310
発行日 2020年4月25日
Published Date 2020/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201634
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
超高齢時代になり,わが国における人工関節置換術の手術数は増加し,さらに糖尿病や人工透析などのリスクを抱えた症例の割合も高くなっている.それに伴い感染症を起こす割合も増加してきている.人工関節の手術における手術部位感染(SSI)は重大な問題であり,起こしてしまった時のショックは,患者は当然のこと,医師にとっても非常に大きいものがある.
急性期の感染であれば診断は比較的容易であるが,慢性化させないための適切な初期対応が非常に重要になってくる.また,遅発性感染の場合には炎症反応が乏しく診断に難渋することも多い.さらに起炎菌が明らかにならないことも多く,治療法の標準化が強く求められてきた.そこで2013年に米国フィラデルフィアでJavad Parvizi先生らが中心となり,第1回人工関節周囲感染(PJI:periprosthetic joint infection)に関するコンセンサス会議が開かれ,204の設問に対する回答が示された.これによりPJIに関して,診療で疑問に思われる事項に対する標準的なコンセンサスが全世界に普及し,整形外科全体に大きな恩恵を及ぼすことになった.
Copyright © 2020, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.