視座
整形“外科”
永島 英樹
1
1鳥取大学医学部感覚運動医学講座運動器医学分野
pp.1051
発行日 2014年12月25日
Published Date 2014/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200057
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不本意にも,筆者の長男は京都で浪人生活をしている.もちろん1人暮らしである.先日,たいして勉強もしていないのに,運動不足の解消とかでジョギングをしたそうである.慣れないことをしたためだろう,足関節を捻挫してしまった.捻挫くらいなら手術を受けることもなかろうと考え,なんと内科診療所を受診した.なぜ内科なのかと尋ねると,整形外科はその名称に“外科”がついているので,手術ばかりする科と思い込んでいたという.小さい頃から,父親が緊急手術のためにしばしば呼び出されるのを目にしてきたことも,この思い込みの原因のようだ.自分の息子が,父親の仕事内容を理解していなかったことに愕然とし,日頃の教育ができていなかったと猛省した次第である.一方,その診療所で父親の職業を聞かれたのではとハラハラしていたのだが,幸いにもばれなかったようで,恥の上塗りを免れることができ,安堵したのも事実である.
循環器内科と心臓血管外科のように保存療法と手術療法を分担している領域とは異なり,眼科,耳鼻咽喉科,泌尿器科,産科婦人科などには,名称に“外科”はついていない.確かに,整形外科には“外科”がついているので,筆者の息子でさえ誤解したのかもしれない.一方で,たまに中学校の同窓会に参加すれば,不惑を越えたはずの女子たちから“シワを伸ばして”とか“アゴをすっきりさせて”と頼まれることがよくある.彼女たちのように,整形外科と美容外科との区別がつかない者はいまだに多い.よくよく考えてみると,整形外科ほど誤解されている診療科はないのかもしれない.
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