連載 知ってますか?整形外科手術の変遷・6
先天性橈尺骨癒合症に対する手術
荻野 利彦
1
,
射場 浩介
2
1整形外科北新東病院札幌手外科・手の先天異常センター
2札幌医科大学整形外科
pp.874-880
発行日 2012年9月25日
Published Date 2012/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102452
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病態,臨床像と手術適応
本症は,先天性の近位橈尺骨癒合に起因する前腕の回内位強直が主症状である.稀に遠位橈尺関節癒合や,橈骨と尺骨が全長にわたり癒合する場合がある.癒合には部分強直と完全強直がある.前腕の強直角度は様々である.完全強直例の多くで,手関節部での回旋代償運動の存在により前腕の回旋がある程度できるようにみえる13).X線像では近位橈尺関節の癒合が認められる.骨癒合の長さは様々であり,成長により伸びる場合もある.橈骨と尺骨の癒合の程度は,軟骨性癒合,皮質骨のみの癒合から,両骨の癒合部に皮質骨がなく骨髄を共有しているものもある.橈骨頭は形態と位置が正常に近いものから,骨頭の著しい変形を示すものや,前方にほとんど脱臼してみえる例もある.本症による障害は,乳児であれば「頂戴」の動作ができない.就学前の児童では手の掌面で水がすくえない,箸の持ち方がおかしい,茶碗をうまく持つことができないなどを訴える.年長児では,逆手での鉄棒の握り,野球での転がってきたボールの捕球などのスポーツ動作の不自由を訴えるものが多い.非利き手罹患の場合に障害を訴えるものの頻度が高い5).
治療では,前述の日常生活動作あるいはスポーツ活動で障害を訴える場合,あるいは,これらの障害の出現が極めて強く予想される場合に手術適応になる.手術法は回旋運動を再建する授動術と前腕不良肢位矯正を目的とした回旋骨切り術に大別される.以下,両手術法の変遷について述べる.
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