誌上シンポジウム 整形外科医の未来像―多様化したニーズへの対応
緒言
菊地 臣一
1
1福島県立医科大学整形外科
pp.400
発行日 2010年5月25日
Published Date 2010/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101722
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
医療界は,今,未曾有の激動期の中にある.卒前・卒後教育の見直し,国民皆保険制度崩壊の予兆,国民の求めるニーズの高度化と多様化,そして地方における医療崩壊など,枚挙に暇がない.これらの問題の解決に対しては,包括的な議論による,一体となった解決策の構築しかない.一刻も早く,政府は「問題対応型」でなく,「問題設定型」の議論と対応により抜本的な立て直し策の策定に乗り出す必要がある.ただ,わが国ではそのために必要な情報が入手できないし,あっても公表はされていない.その結果,国民的議論や海外との比較の前提になる「情報の共有化」がなされていない.
整形外科という診療科自体も,今,岐路に立っている.西洋医学が明治時代の初頭に導入されて以来,先人達は,整形外科の専門性の確立と同時に,その守備範囲を広くすることに努力してきた.その結果,わが国における整形外科は,海外には類をみない独自な,そして巨大なプロ集団を構成するようになった.その内容は,運動器に関してのプライマリケアから専門医療まで,運動器の器質・機能障害に対する一貫した診療体制である.すなわち,運動器の外傷や疾患の予防,保存療法,手術療法,そしてリハビリテーションまでを担当しているのである.領域別にみても,骨や関節の外科や外傷はもちろん,関節リウマチ,痛風,骨代謝,骨・軟部腫瘍,スポーツ医学,脊椎・脊髄外科,リハビリテーション医学までを守備範囲としている.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.