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あとがき
菊地 臣一
pp.102
発行日 2010年1月25日
Published Date 2010/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101669
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師走に入ったところでこの原稿を書いています.激動というよりは混迷の2009年(平成21年)でした.2010年はそれに輪を掛けたような年になると覚悟しています.
今という時代,教育や医療制度は私が研鑽を積んでいた時期のそれとは異なり,大幅に変更されてきています.FDとかチュートリアルとか,カタカナ言葉が氾濫しています.より良き教育のために,われわれ自身が変わることが求められています.時代のパラダイムシフトに対応するには,We must change to remain the same,その通りです.ただ,私にはいまだに違和感が残ります.教育とは,教える者の熱い心と学ぶ者のひたむきな姿勢があって初めて成立します.卒後研修制度の発足以来,学ぶ者に受け身の姿勢が目立ちます.一方,教える側にも教える技術を学ぶ機会がなかったためもあって,戸惑いとともに,距離を置いて相手を傷つけないように気を遣っているようにみえます.このような環境では師弟の絆は成立しにくくなっているような気がします.「教育とは一緒に動くこと」という私の考えは古いのでしょうか.こんなことを考えるのは,私の周囲で想定を越える若者の不祥事が続出しているからです.「楽観主義者は,すべての困難の中に好機を見出す(チャーチル)」のだそうですが,とてもそんな心境には至りません.
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