誌上シンポジウム 膝骨壊死の病態と治療
緒言
糸満 盛憲
1
1北里大学医学部整形外科学
pp.120
発行日 2009年2月25日
Published Date 2009/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101448
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特発性膝骨壊死症は60歳以上の高齢者に発症する疾患で,大腿骨顆部に多く発生する.片側例が多く,女性は男性の約3倍の発生頻度であり,急性疼痛をもって発症することが大きな特徴である.一方,全身性エリテマトーデスなどの基礎疾患を伴い,ステロイド剤投与歴のあるステロイド性骨壊死症は若年者に発症し,両側発症が多く,大腿骨頭壊死症を合併する頻度が高い.一般に壊死範囲は特発性に比べて大きく,圧潰を来しやすく治療が困難である.
これら膝骨壊死症の病態は不明な点が多く,その病因についても,骨内の微小循環障害によるとする血行障害説がある一方,特発性,ステロイド性ともに基盤に骨粗鬆症があることから,軟骨下骨の骨梁の脆弱性骨折insufficiency fractureが原因と考える外傷説がある.本特集で山本らは,高齢者の特発性骨壊死症の病理学的観察から,早期の所見は軟骨下骨梁の脆弱性骨折のみで骨壊死は認めないが,進行期例では骨折部より末梢部に限局した骨壊死を認めたことから,本骨壊死の病因は軟骨下骨梁の脆弱性骨折であることを強調している.清水はステロイド性骨壊死症250関節を含めた膝骨壊死症300関節の単純X線所見とMRI所見を中心に検討し,ステロイド性骨壊死症は全身投与されたステロイドの影響による骨髄内の血流障害によって軟骨下骨の骨壊死が発生するが,特発性骨壊死症では血流障害にメカニカルストレスが加わることが原因であろうと述べている.
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