--------------------
あとがき
高岸 憲二
pp.102
発行日 2008年1月25日
Published Date 2008/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101214
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今年は秋の気配を感じたと思ったら急に寒くなり,ゆっくり紅葉を楽しむ暇もなく,大学からみえる谷川岳はうっすらと雪化粧をしています.
巻頭言で第81回日本整形外科学会会長の三浪明男教授は日整会総会のテーマとして「整形外科の未来を拓く」を掲げられ,昨今の医療環境の厳しい状況により医療全体が萎縮傾向にあり,整形外科も例外でないことから整形外科医療のおかれた現状から未来に向け,先端的研究や新しいアイディアに満ちた先進的な治療法の発表と教育研修で,より質の高い整形外科医の養成と社会への貢献を達成したいと述べられています.先進的な治療法の1つに再生医療があり,整形外科をはじめ多くの領域で再生医療の研究が進められていますが,人の皮膚細胞などに複数の遺伝子を組み込んで各種の組織のもとになる万能細胞(人工多能性幹細胞=iPS細胞)をつくることに,京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授らが成功したことは記憶に新しいトピックでした.山中教授は元整形外科医であったと聞いて整形外科医の分化能力(?)の高さにビックリしています.米国のウィスコンシン大も同様の成果を発表しています.人間の体細胞から万能細胞ができたことで,臓器や組織を補う再生医療が現実味を帯びてきました.その後,貧血症のマウスの皮膚細胞から作製したiPS細胞の中にある貧血の原因遺伝子を健康な遺伝子と組み換えて造血幹細胞に分化させ,貧血の治療に成功しています.がん化などこれから克服すべき問題もありますが,今後軟骨再生など多くの整形外科領域の再生医療にこの技術が応用される日が来ることを期待しています.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.