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整形外科とは「運動器障害に対する機能再建をその主な目的とする」という旨が多くの教科書に記載されている.しかしながら臨床の現場においてほとんどの患者さんは,疼痛などの感覚障害を主訴として整形外科外来を受診する.患者さんの多くは少しばかりの運動器障害だけでは決して整形外科を受診しないものであり,これに疼痛が伴ってきて初めて来院する.このように疼痛などの感覚障害の病態解明や治療がわれわれ整形外科医にとって最も重要なテーマであるにもかかわらず,おろそかにされてきた傾向がある.整形外科医が社会に対して今後その存在意義,存在価値を高めるためにも,これらに対する知識および対応(治療を含む)は必須であろう.
前置きが長くなったが,今回は感覚障害の中でも最も治療に難渋するRSD(reflex sympathetic dystrophy)を含む頑固なneuropathic painの病態と治療を取り上げた.RSD(カウサルギーを含む)に関しては,19世紀以降その存在は知られていたが,今日でもその病態・治療に関しては十分に解明されているとは言いがたい1~3).またRSDの発生頻度は2,000例の手術に1例程度の発症,また手術侵襲が低い症例の術後に発生することが多い傾向があるなどから,第一線の整形外科医は対応に苦慮されていると思われる5).この誌上シンポジウムでは,各専門領域の経験豊かな先生方に執筆をご依頼した.その理由はRSDに対する治療は包括的に行うべきであるということが,徐々にではあるがわかってきたからである.すなわち従来RSDは主として交感神経系の関与が強いといわれてきたが,最近の研究結果からは複合的要素が発症に関与する可能性が高いということ,その結果として治療は包括的に行うべきであるという見解が一般的になってきたからである.このような背景からも1993年に国際疼痛学会(IASP)では,RSDを「CRPS(complex regional pain syndrome)」と呼称することを提案しているようである4).この誌上シンポジウムで「RSDに関してはここまでわかっている,また治療に関してもこのような方法がある,さらには今後この研究を進めるにあたっては,どのあたりに注目すべきか」というあたりが理解してもらえたらと思う.
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