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「後縦靱帯骨化症(OPLL)は,1838年にKeyが最初に報告をし,本邦では1960年の月本の剖検報告に始まる」.後縦靱帯骨化症の歴史が述べられるとき,このような形の記載をしばしば目にする.どのような疾患,あるいは病態が「後縦靱帯骨化症」の始まりされているのか,極めて興味深い.が,これほど古い文献を容易に手に入れることはできないので,冒頭のような記述を鵜呑みにする他なかった.幸い,松永俊二先生が原著論文を読み,その解説をされたので,積年の気がかりが消えた.いずれにせよ,Keyの報告を始まりととれば約170年が,月本の報告からは約50年が過ぎようとしている.その間に,OPLLはどこまで明らかにされ,またその治療はどのように行われるようになったか.
本症の研究は,1975年に設けられた厚生省特定疾患研究事業による研究班〔班長:津山直一東京大学教授(当時)〕が研究の中心となって,整形外科医を中心とするものの,オールジャパンの研究体制の中で進められた.この体制は現在,厚生労働省特定疾患対策事業「脊柱靱帯骨化症に関する調査研究班」(班長:中村耕三東京大学教授)として引き継がれ,本症の原因解明,治療法開発が続けられている.30年に及ぶ研究の成果は膨大なものである.加えて,治療に関しては日本以外の国々からも報告が出されるようになり,蓄積された臨床経験も豊富となった.この状況から,調査研究班はこれまでに蓄積された知見を,系統的な文献レビューの手法で吟味し,現在までに何がどの程度明らかにされたか,そして今後の研究の方向性はいかにあるべきかを検討した.日本整形外科学会がいくつかの疾患について診療ガイドラインを策定することを決定したことと時を同じくしたので,日整会と協同して「頚椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン」を作成した.この紙数でOPLLの現状をまとめるのは難しいので,是非ご一読いただきたいと思う.
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