今月の主題 神経内科の動き
注目されている神経病
頸椎後縦靱帯骨化症
矢田 賢三
1
,
佐藤 正治
2
1北里大脳神経外科
2北大脳神経外科
pp.1436-1439
発行日 1974年11月10日
Published Date 1974/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205660
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後縦靱帯骨化症は,脊椎椎体の後面を縦走する後縦靱帯に骨化がおこり,脊椎管腔がその前面より次第に狭窄されて,ついには脊髄および神経根に圧迫が加わり,種々の神経症状を発現してくる疾患で,その発生部位は頸椎レベルに圧倒的に多く,胸椎に発生して症状を発現する症例は稀である(われわれの経験した有症状例40例中,胸椎レベルより症状の発現したものは2例にすぎない).腰椎に発生することもあるが,腰椎部の骨化症により神経症状の発現した例は報告がない.
本症の患者においては,後縦靱帯のみならず,脊椎の前縦靱帯,黄靱帯,仙腸関節部の靱帯などにも骨化のみられることが圧倒的に多く,また,組織学的にも,単なる靱帯への石灰沈着ではなく,骨組織におきかわっているところからみて,なんらかの原因によって全身的におこってくる靱帯の骨化現象の部分現象と考えた方が良いようである.骨化をおこさせる原因は未だ解明されていない.日本人に好発し(白人に発生したという報告は数例にすぎない),かつ在米二世に発生した報告が稀であることから,食事,飲料水の成分などが関与しているのではないかという推論もされているが,未だ確証はない.骨化した病巣はきわめて緩徐ではあるが,年とともに増大する.われわれの症例の中で,2年以上follw-upできた13例の統計では,頸椎部において前後経で平均1年間に0.67mm,上下方向で年平均4.07mmの増大をみている.
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