私の工夫—手術・処置・手順・8
陥没乳頭合併乳輪下膿瘍の手術
神 雅彦
1
Masahiko JIN
1
1青森県立中央病院外科
pp.498
発行日 1995年4月20日
Published Date 1995/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407905190
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乳輪下膿瘍は小外科疾患として軽視されがちだが,切開排膿のみでは再燃することが多く,20年余の病歴を有する例すらある.特に重度の陥没乳頭を合併している例では難治性であり,手術に際しては,根治はもとより美容的にも配慮した術式が要求される.われわれは,これら重症な17症例19部位に対し,拘縮,破壊した乳頭基部乳管の完全摘出と,乳頭形成により良好な結果を得ているので,その手技につき述べる
原則として全麻下で行う.切開線は放射状とし,できるだけ乳輪有色部におさまるようにする.乳輸弧状切開は、乳輪が不整形なうえ,妊娠などで乳房が肥大すると意外に目立つので行っていない.膿瘍または瘻孔の直上乳輪縁から乳頭中央部までの皮膚切開をおいたあと(図1—a),陥没の最深部に牽引糸をかけ前方に引き出すようにする.メッツェンバウム剪刀を用い,罹患乳管開口部から深部の軟らかい乳腺組織が露出するまで,瘢痕短縮化した部を円筒状または円錐状に剥離,摘出する.操作中,吸引,電気凝固止血をていねいに行い,健常と思われる乳管の犠牲を最小限にするよう努める.この際,皮下の膿瘍腔や瘻孔の合併切除も望ましいが,必ずしも必須ではないと考えている.
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