特集 画像で決める癌手術の切除範囲—典型症例総覧
Ⅵ.肝癌
肝細胞癌に対する系統的区域・亜区域切除術
菅原 寧彦
1
,
今村 宏
1
,
伊地知 正賢
1
,
國土 典宏
1
,
幕内 雅敏
1
Yasuhiko SUGAWARA
1
1東京大学医学部肝胆膵・人工臓器移植外科
pp.196-202
発行日 2001年10月30日
Published Date 2001/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904652
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はじめに
肝細胞癌では高頻度に腫瘍が門脈内に浸潤し,経門脈性に肝内転移巣を形成する.事実,腫瘍の門脈浸潤や肝内転移巣の有無は,これまでの報告に一貫して共通した予後不良因子として挙げられている.理論的にはこれらの因子による再発を防ぐためには,腫瘍に向かう門脈によって灌流される領域を系統的に切除するという解剖学的切除が必要となる.一方で肝細胞癌のほとんどの症例が背景に慢性肝炎や肝硬変を有しているために,肝予備能の面からはむやみな広範囲切除は適応できない場合が多い.こうした事がらを背景に,限られた肝機能条件内での解剖学的切除によって潜在的微小病巣を含めた腫瘍の切除を目的として考案されたのが,系統的亜区域切除術である1).肝細胞癌における系統的亜区域切除術を含む適応術式の選択は,肝機能条件と腫瘤条件とのバランスによる.
肝機能条件からみた許容切除量については,筆者らは図12)に示したフローチャートに従って決定しており,過去8年間の500例以上の肝細胞癌肝切除症例で術死を経験していない.系統的亜区域切除術はほぼ全肝の6分の1切除に相当し,腫瘍条件として,その進展範囲が切除する亜区域以内に限局していることが前提となり,通常は主腫瘍径が5cm程度までの肝癌に適応となる.また肝予備能からは区域切除以上が可能であるような症例でも,腫瘍の大きさや位置からは亜区域切除で十分と考えられるものに対しては亜区域切除が適応となる.
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