特集 画像で決める癌手術の切除範囲—典型症例総覧
Ⅱ.胃癌
IELMを用いた早期胃癌の神経温存縮小手術
木南 伸一
1
,
三輪 晃一
1
,
萱原 正都
1
Shinichi KINAMI
1
1金沢大学大学院医学系研究科がん局所制御学
pp.65-72
発行日 2001年10月30日
Published Date 2001/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904627
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はじめに
これまで深達度Mで2〜5%,SMで15〜25%の頻度にリンパ節転移が認められることから,早期胃癌の標準治療はD2胃切除とされてきた1).D2では胃への主要脈管の多くが郭清操作に伴って切断されるので,胃切除範囲は幽門側胃切除・噴門側胃切除・胃全摘となり,3分の2以上の胃が切除されるのが通常である.かかる切除では術後に胃切除後症候群で総称される術後障害が生じ,郭清に伴う自律神経損傷が生じる.一方,早期胃癌の大部分は転移を認めず,転移陰性症例にはD2の手術侵襲と術後障害はデメリットとなる.
筆者らは1991年D2の根治性を維持し,自律神経機能を保持する迷走神経温存リンパ節郭清術(vagus-saving D2:以下,VS-D2)を開発した2).この術式の考案には早期胃癌のリンパ節転移を術中に診断することが困難であった背景があった.この術式は胃切除後患者の胆石発生,下痢,体重低下,膵臓内分泌不全3)などの障害をよく防止し,神経温存に意義のあることが実証された4).
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