特集 癌治療のプロトコール—当施設はこうしている
Ⅱ.胃癌治療のプロトコール
鹿児島大学医学部・第1外科
夏越 祥次
1
,
石神 純也
1
,
帆北 修一
1
,
愛甲 孝
1
Shoji NATSUGOE
1
1鹿児島大学医学部第1外科
pp.53-60
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904251
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術前診療のプロトコール
1.術前患者の評価
①全身状態の評価
視診(体格,栄養状態,皮疹など),触診(Virchow転移やDouglas窩転移,腫瘍の触知など),聴診(心肺異常,イレウスの有無など),打診(胸・腹水貯留,肝腫大など),問診により全身状態をチェックし,個々の患者にとっての問題点を把握する.循環機能検査として心電図,血圧測定を行い,異常を認める場合は心エコー,Holter心電図,RI検査などにより精査している.呼吸機能は胸部X線,呼吸機能スパイログラム,動脈血ガス分析によりチェックする.肝機能,耐糖能を採血により,腎機能は検尿,血液検査,クレアチニン・クリアランスによって調べる.高齢者ではとくにperformance statusや精神障害の有無について調べておく.肝炎や梅毒などの感染や鼻腔内のMRSAの存在などをチェックする.
術前合併症では狭心症,不整脈や心電図異常などの循環器障害,結核,喘息,肺機能低下などの呼吸器障害,肝機能障害,糖尿病,腎機能障害,脳血管障害などがみられる.最近高齢者が増加しているため,潜在性の合併症もあることを念頭に置く必要がある.教室例の高齢者胃癌で,心,肺,肝,腎,脳などの2臓器以上の合併症を有する症例は70〜74歳で45%,75〜79歳で47%,80歳以上では62%であり,複数臓器に機能障害を認める頻度は高率である(図1)1).
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