特集 薬物療法マニュアル
Ⅳ.術後愁訴と合併症の薬物療法
3.ICU症候群
佐藤 一範
1
Kazunori SATO
1
1新潟大学医学部附属病院集中治療部
pp.262-263
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903847
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基本的な事項
ICUに収容中の患者にある種の精神症状が発現した場合,中枢神経系に機能異常や器質的な合併症が認められないときにICU症候群と診断される.ICUという特殊環境によって引き起こされた精神症状との認識からこの用語が使用されてきた.事実,ICUにおいては重要臓器の機能不全に対処するため,多くの医療機器が配備,使用され,ベッド上の安静を余儀なくされ,近親者との面会が著しく制限される.また,医療機器から発生する機械的騒音や室内の照明などによって昼夜のリズムに狂いが生じやすい環境である.こうした種々の要因がストレスとなって重なり,患者の精神障害を誘発すると考える立場からは,ICU症候群という用語はそれなりに意味のあるものかもしれない.しかしながら,ICU症候群の定義は曖昧で,不眠,不安,抑うつ,幻覚妄想,せん妄など多彩な症状が含まれ,施設間でその意味するものに相違があることが報告されている1).近年,ICU症候群という屑籠的な用語を避け,専門領域である精神科的にそれぞれを診断するほうが妥当と考える施設も増えている.
ICUせん妄はしばしばICU症候群と同義に使用されるが,その発現は特に重要で,患者の予後にも影響する.外科系のICU患者における発生頻度は11〜28%であり,高齢の術後患者では37%にも及ぶと報告されている2).
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