特集 クリティカル・ケア[2]—事例にみる系統的アプローチとケアの実際
ICUの環境を考える—‘ICU症候群’を中心に
清竹 小夜子
1
,
上村 のり子
1
1近畿大学医学部付属病院ICU
pp.289-292
発行日 1982年3月1日
Published Date 1982/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919496
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はじめに
ICUとは‘内科系・外科系を問わず,呼吸,循環,代謝,その他の重篤な急性機能不全の患者を収容し,強力かつ集中的に治療,看護を行なうことにより,その効果を期待する部門である’と定義されている.収容される患者は濃厚な治療・看護を受けることによって救命の見込みのある者に限られ,そこでは医師,看護婦,その他の医療従事者が1つのチームをつくり,急変をいち早く発見,予知し,救急事態が発生した場合も速やかに処置を行い,重症患者を生命の危険から守っている.
ICUでは,一般病棟と比較すると,いろいろな医療機器が用いられ,検査も頻回に行われる.しかしこれらは患者に対してよりよい治療・看護を行うための補助的手段でしかない.医療技術が進歩し,ICUに収容され,強力かつ集中的に治療・看護をうけても,必ず救命できるとは限らない.また,ICU入室期間が長びくにつれ,朝・夕の区別がない特殊な環境は患者の心理面に大きく影響し,次第に不安,不穏状態を増強させ,‘ICU症候群といわれる精神症状も出てくる.
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