カラーグラフ 消化器の機能温存・再建手術・2
胸部食道癌に対する機能的拡大リンパ節郭清術—右気管支動脈,迷走神経気管支枝および心臓枝,奇静脈弓,胸管温存手術
藤田 博正
1
,
末吉 晋
1
,
山名 秀明
1
,
白水 和雄
1
Hiromasa FUJITA
1
1久留米大学医学部外科
pp.1245-1251
発行日 1998年10月20日
Published Date 1998/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903295
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はじめに
筆者らは頸胸腹三領域リンパ節郭清術を胸部食道癌切除例に対する標準手術と考えている.その適応基準は,(1)根治切除例,(2)70歳未満,(3)低リスク症例の3条件である.リスクの判定は肝腎心肺機能に糖尿病の程度を加味したスコアリング法,エルゴメータによる運動時最大酸素摂取量,アシアロ肝シンチ,術前補助療法の有無などを勘案して行っている.最近の数年間では(1),(2)の適応基準をクリアしていれば,できる限り三領域郭清術を行う方針であり,胸部食道癌切除例の70%以上に施行している.
三領域郭清術の適応拡大にあたり,「合理的リンパ節郭清」と「機能的温存縦隔リンパ節郭清」の2点を重視した.「合理的リンパ節郭清」とは食道癌のリンパ節転移・再発の様式ならびに生存率から各リンパ節の重要性を評価し,それに基づいて郭清範囲を決定した1,2).「機能温存縦隔リンパ節郭清」では術後合併症の検討や動物実験に基づき,気道の阻血を防止するために右気管支動脈を温存し,咳嗽反射の減弱や消失を防止するために右迷走神経気管支(肺)枝を温存した3,4).さらに3rdspaceへの体液貯留を減少させる目的で胸管を温存した.奇静脈弓の温存は縦隔郭清時や後縦隔胃管挙上時の気管支動脈の損傷を防止することが主たる目的である.現在では,気管分岐部にまたがる進行食道癌を除き,この機能的拡大リンパ節郭清術を施行している.
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