臨床外科交見室
理想の医師像とは
竹内 仁司
1
1国立岩国病院外科
pp.1445
発行日 1997年11月20日
Published Date 1997/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903033
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学士入学制度の導入など医学教育のあり方が問われている.医学部に入るためには,できるだけ入試に関係しないことは無駄として省くとともに,体力的にも経済的にも恵まれた環境でなければ困難なほど,医学部ブームは加熱している.しかし,そのような環境下で医師になった人たちが,社会の様々な出来事や,弱者の立場に立たされる人々の気持ちを理解できるであろうか.現在の入試制度では医学部入学者は偏差値教育の勝利者であっても,必ずしも全人的に医師として適格といえるか,はなはだ疑わしい.
患者の気持ちを理解せずに良い医療など行えるはずがない.患者は肉体的のみでなく精神的に弱者であり,われわれの前に心身をさらし,プライバシーまでも放棄しなければならない.また,身体が弱く多少心がなえていても,健康人と同様の生活願望をもっており,サービスの質や人間の態度を評価する力は健康人よりも敏感である.このような患者心理を理解するには,所得や地位の高低,教育程度,さらには家族,職場環境や文化的志向など,多面的な要素で人をとらえる能力が要求される.しかし,患者の気持ちを理解するには,あまりにも医師は人生経験に乏しく多忙で心のゆとりがない.にもかかわらず今まで医師は医療の中心としての役割を担ってきた.
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