メディカルエッセー 『航跡』・15
カナダ横断30日間講演旅行(2)—カルガリーからハリファックスへ
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.1446-1447
発行日 1997年11月20日
Published Date 1997/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903034
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1983年9月,第52回カナダ医学会総会(The Congress of the Royal Colleges of Physicians and Supens of Canada)はカナディアンロッキーの東の裾野に位置するカルガリー市で開かれた.『ブレッド・マクロード講師』として医学会総会と分科会のカナダ小児外科学会でそれぞれ1時間の特別講演をするためにはるばるニッポンから飛んで来たのである.
総会の会場に赴くと,会場は300人ほどの聴衆でほぼ満席であった.最前列に座っている人の顔には明らかに途惑いと動揺の表情が見てとれる.前年のフレッド・マクロード講師は,ピッツバーグ大のマーク・ラビッチ教授,翌年に予定されていたのはヒルシュスプルング病手術の創始者であるスエンソン教授であった.御両人とも齢60歳をとっくの昔に過ぎ,今や引退にさしかかろうという大御所であるから,その間にぽつんと四十いくつかの若造が入るのは,調和を欠いて当然である.「この若造は通訳で,そのあとからうんと熟し切った長老が出てくるに違いない」と思った人も少なからず居たそうである.
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