臨床外科交見室
腸管吻合にまつわる冠名を再検証する
佐藤 裕
1
1九州大学医学部第1外科
pp.1447
発行日 1996年11月20日
Published Date 1996/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902569
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冠名(Eponym)とは,解剖学上の新知見や生理学的な法則,新しい手術法や手技などを,その報告者ないし普及させた者の名を付して呼ぶことである.消化器外科の分野に目を向けると,腸管吻合に関して“Albert—Lembert(アルベルト‐ランベール)縫合”がよく知られている.日本においては,腸管吻合に際して「全層縫合後に漿膜筋層縫合を追加し,腸管を二層性に縫合する」ことが一般的に行われ,慣習的に“Albert-Lem-bert縫合”と呼ばれているが,「厳密に言うとこの吻合法を“アルベルト‐ランベール法”というのは間違いである」というのが本編の主旨である.
まずアルベルト縫合であるが,これは故堺利彦新潟大学教授の考証によると,1922年に発刊された“Chirurgische Oper-ationslehre(Bier-Braun—Kümmell)の中の”Nahttech-nik"の項の記述に始まるものである.
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