特集 術前ワークアップマニュアル—入院から手術当日までの患者管理
Ⅰ.術式別:術前患者管理の実際
1.頸部手術
甲状腺癌手術
吉田 明
1
,
麻賀 太郎
1
,
河原 悟
1
1神奈川県立がんセンター外科2科
pp.12-16
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902439
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甲状腺癌は組織型により生物学的性状が大きく異なるため,組織型をよく見極めてから治療方針を決定し準備を進めることが重要である.根治手術の適応となる甲状腺癌は分化癌と髄様癌であるが,頻度的には分化癌(乳頭癌)が圧倒的に多い.分化癌に対しては甲状腺の葉切除〜全摘と頸部の保存的郭清が標準的な術式となっている.通常この手術を行う場合は特別な準備は必要としない.しかし腫瘍が大きい場合はCTや内視鏡などにより病巣の広がりや反回神経麻痺の有無について調べておくことが必要であり,隣接臓器の合併切除や縦隔郭清を行う場合は,心肺機能の評価を十分に行っておくべきである.髄様癌の場合は上記に加え上皮小体の病変や褐色細胞腫の合併の有無を確認することが必須である.甲状腺癌が甲状腺の機能異常を伴うことは稀であるが,念のため甲状腺ホルモンや抗甲状腺抗体を測定し,機能異常や橋本病の合併の有無を調べておくことも必要である.手術のインフォームドコンセントにおいては,対象となる癌の性状を十分に説明するとともに,甲状腺機能低下,上皮小体機能低下,反回神経麻痺など,起こり得る合併症についても話しておくことが必要である.
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