臨床外科交見室
医者への処方箋
青木 孝文
1
1公立甲賀病院外科
pp.894
発行日 1996年7月20日
Published Date 1996/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902347
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この数年間で,手術は低侵襲化と縮少化に向かって発展し,新しい手術器具により様々な手術術式が編み出されている.今や腹腔鏡手術が出来なければ,外科医として時代遅れの老人扱いをされかねない雰囲気である.腹腔鏡手術の普及は,かつてのCTのそれと同様である.その手術術式による恩恵を考えれば,患者の受ける苦痛や負担が非常に少なく,これは当然で歓迎すべき事である.
けれども本当に医者や看護婦は,患者の苦痛の除去に真剣に取り組んでいるのだろうか?いかに新しい手術術式を取り入れても,術後の苦痛を改善しなければ,画竜点晴を欠く結果になってしまう.病棟の職員一同が『術後の疼痛を我慢させない』という認識を持ち,いかに疼痛を積極的に改善していくかを考える必要がある.例えば,苦痛の多い胃管が不要だと論文に示されても,無くす事ができない.また術後の鎮痛剤の筋注は,医者の指示があるとはいえ,看護婦も習慣により日常的に行っている,胃管や筋注がどれだけ苦痛を与えるかを,まともに考えていない.なかには「傷の治りが悪くなる」と言って,鎮痛剤を必死で我慢させていることもある.
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