鴨川便り・3
クリニカル・インディケーター
牧野 永城
1
1亀田総合病院診療統括
pp.354-355
発行日 1994年3月20日
Published Date 1994/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901507
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アメリカのJCAHOによる,医療の質の「維持」を「改善」に一歩進めるための活動は数年前に始まったばかりで,「質の保証」という項目が「質の評価と改善」という名に改められたのは,つい1992年のことである.従来の監査によって質の評価を行う方法は,いわば見張られて質を維持するという受け身の姿勢を作らせた.これを,水準の維持というより,より高い水準を目指して更に努力するという能動的な姿勢に転換できないかという考えである.より良い質とは不断の改善の積み重ねの上に生まれるという発想が,彼等が日本の企業から学びとったものであるということは,日本の医学,医療の世界にその認識が全く無いのと対比して.かなり奇異なものに感じられる.
さて,その方法として考案されたのがクリニカル・インディケーターである,前述した診療を構成する構造,結果,プロセスについて自由に多くの指標を作るのだが,その指標は数字で計量できるものを選ぶ.年次比較や他の施設との比較を可能にするためである.これらを病院の各部門共通の一般的指標と専門部門に関連した指標に分ける.しかし,これも前に述べたように,医療の中核である診療の最も直接的な評価方法は診断,治療のプロセスを調べることであり,従来アメリカでは評価の重点をここに置いてきた.クリニカル・インディケーターは従来の指標に比べてさらに具体的に,臨床の診断,治療の領域に踏み込んだものである.
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