特集 疼痛をどうコントロールするか
外科医と疼痛管理—手術を受けた立場から
山本 貞博
1
1愛知医科大学第1外科
pp.1045-1048
発行日 1993年8月20日
Published Date 1993/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901224
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はじめに
痛みには,肉体的な疼痛という側面とともに,生体の機構に異常が生じ,これに適切に対応しないと生命に危険が及ぶ可能性があるということに対する精神的な恐怖という側面がある.現今の手術の進歩は,疼痛管理のほか呼吸循環の維持を含めた麻酔学の発展に支えられているのであるが,患者側からみると「手術は痛い」ものとする固定観念があり,その裏には疼痛よりもむしろ恐怖が隠されているといってよい.
術後の管理にてこずる場合の典型は,患者が医師であるときとされており,なかでも「外科医となると最悪」と評されるのが通例である.いろいろな知識や経験をもっているため,疼痛と恐怖が歪曲され増幅してしまうので,管理上きわめて迷惑な患者になりやすいようである.
痛みは個体差が著しく,また人は過去を忘れやすいので,10年ほど前の2回の開腹手術体験も昨秋の娘の開腹手術経験も,ずいぶんと偏見に支配されていることは承知している.しかし,いまにしてカルテの記述を追い,また覚え書きなどを参照すると,それなりに「なるほど」と思う点が散見されるので,自験概要とそれを通じてみた患者側の要請について取りまとめた.
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