昨日の患者
手術を受ける立場となった外科医
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.873
発行日 2016年7月20日
Published Date 2016/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211238
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自らの専門分野で手術を受けるとなると,手術方法,そして術者が大いに気になる.さらに通常は冷静に判断できても,自分のことになると診断さえ間違えることがある.
日本外科学会の重鎮であったS先生が大学教授退官後に激しい心窩部痛が生じ,十二指腸潰瘍穿孔と自己診断した.ただS先生はメタボであり,上腹部正中切開後に腹壁瘢痕ヘルニアを起こすことを危惧した.そこで最も信頼する弟子に手術を依頼するとともに,常日頃行っていた上腹部正中切開ではなく,肋骨弓下弧状切開で開腹することを指示した.指示に従い肋骨弓下弧状切開で開腹したが,十二指腸に所見はなく,壊疽性虫垂炎であった.そこで肋骨弓下弧状切開創から虫垂切除を行ったが,手術は困難を極めた.
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