特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅴ.併存疾患をもつ外科患者の薬物療法
1.てんかん
佐藤 光源
1
1東北大学医学部精神科
pp.148-149
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900974
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てんかん治療の目的が,脳神経細胞の過剰興奮によるてんかん発作を消失させることにあることはいうまでもない.しかし,てんかんはそうした発作が長期間にわたって繰り返し出現するところに疾患としての特徴があり,その基盤には発作を再現させる長期持続性の痙攣準備性がある.この脳の痙攣準備性をてんかんの原因とみなすことができ,それを治癒させることがてんかんの原因治療に相当する.しかし,抗てんかん薬と呼ばれて日常の臨床に用いられている薬物は,主に発作を抑制する薬物であって,脳の痙攣準備性を治癒させる作用は明らかでない.このため,抗てんかん薬による薬物療法は原因治療というよりも,痙攣準備性をもとにてんかん発作が再現するのを抑え続ける治療といっても過言でない.このため,その薬物の有効血中濃度が保たれている時には発作の再現を抑制する効果があるが,服薬を中止すると発作が再現するだけでなく,発作の重延状態を来す可能性もある.こうした理由で,てんかんの薬物療法には長期にわたる服薬継続が必須なわけで,コンプライアンスが特に重視される所以でもある.
痙攣重延状態の治療に,脳機能を抑制するdi-azepamやamobarbitalの静脈内注射が行われるほどであるから,大脳皮質神経細胞の機能を抑制する全身麻酔下では,てんかん発作の発現はない.
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