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I.はじめに
CT,さらにはPET(positron emission tomography)が臨床に応用されるようになって,てんかんの臨床的研究はめざましい進歩をとげつつある。てんかん患者の集中監視や深部脳波で得られた情報を,CT,PET所見と照合することによって,脳の機能,形態,代謝的側面を浮き彫りにすることが可能になった。その結果,新しい知見が次々と報告されている。たとえば,てんかん焦点部位のエネルギー代謝は,発作間歇時には大きなばらつきがあり,低代謝であったりあるいは代謝亢進がみられたりすることや,発作の発現に際して著明な代謝亢進が起こることも見出されている8)。これはてんかんの病態を研究するうえで発作間歇時と発作時を分けてとらえることの重要性を示すだけでなく,発作間歇時の生化学的変化は一様でないことを示唆している。このように臨床的なてんかんの研究の進歩には瞠目すべきものがあるが,てんかんの病態をさらに深く解析するためには動物を用いた基礎的な実験が必要である。てんかんの動物実験モデルが要請されるのはこのためである。一般に,ある疾病の実験動物モデルというためには,その動物がその疾病と共通した病因または状態指標をもたねばならない。少なくともその動物を用いると,その疾病のどのような状態を研究できるのかが明確に規定されていなくてはならない。てんかんの場合,てんかんの臨床的な概念規定,「発作が中枢神経系の異常な興奮に由来し,長期にわたり反復する病態」を満たすことが必要である。この規定によれば,単にてんかん様発作が起こるだけでは十分でなく,長期にわたって持続するけいれん準備状態が存在し,自発発作が反復出現することが重要視されている。キンドリングモデルは,この規定を満たす数少ない実験てんかんモデルの一つである。キンドリングについての総説は別に詳しく述べた23,34)のでここでは簡単にその概略を整理するにとどめ,最近の研究の動向,とくに,精神分裂病の研究モデルとして佐藤が提唱したメタンフェタミン(MAP)逆耐性とキンドリングとの関連をめぐる最近の知見についてとりあげてみた。
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