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てんかんは全年齢にみられる代表的な精神神経疾患の1つで,なかでも成人てんかんはこれまで主に精神神経科の対象疾患であった。大学病院や総合病院では精神科医がてんかん患者の主治医になり,てんかんや臨床脳波の医学教育だけでなく,てんかんの病態や治療をめぐる臨床・基礎的な研究もその役割を担ってきた。そして現在もてんかんは医療・福祉行政において精神科医療に位置づけられており,障害者自立支援や障害年金などの診断書の発行も精神科医の業務である。ところが近年,精神科医のてんかん離れが進み,第44回日本てんかん学会(2010,岡山)では,成人てんかんとその精神・行動障害の治療で関連診療科と精神科間の診療連携に支障を生じていることがクローズアップされ,一般の精神科医にてんかん診療のレベル向上が求められた。
こうした精神科医のてんかん離れは,てんかんを対象とする医学領域の専門分化(小児神経学,精神医学,神経内科学,脳神経外科学)や神経精神医学のダイコトミー(精神神経科と神経内科の二極化)が進んだことや,日本てんかん学会による専門医制度の実施など,いくつもの要因が関与している。とりわけ,わが国の精神神経科医が重視しているのは,国際疾病分類の第10版(ICD-10,1992)の「Ⅴ:精神・行動の障害」からてんかんが除外され,「Ⅵ:神経系の疾患」に分類されたことである。厚生労働省はこの国際疾病分類を採用し,精神保健福祉法も精神障害をICD-10「Ⅴ:精神・行動の障害」と規定しており,てんかんは精神障害には含まれていない。同様の分類は,DSM-Ⅲ(1980)が先行している。こうした分類は,統計学的な疾病分類での有用性は別として,病因・病態を踏まえたてんかん医療や障害特性を理解した保健福祉活動に混乱を生じさせ,それが診療科連携に支障を来す大きな要因である可能性がある。ICD-10の改訂作業が進められている現在,成人てんかんとその精神症状・行動障害に精神科医はどうかかわるべきか見直し,改訂に向けた具体的な提案を含めて検討する必要がある。
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